▼樹齢20年
除夜の鐘を撞きに行きました。
実家の近所のお寺でお経をあげ、除夜の鐘をついて帰ってくるのがここ数年の恒例になっています。
副住職さんがお作りになったチキンスープで暖を取りながら、境内で焚き火にあたり、鐘撞き前の法要を待ちます。
「この木は樹齢何年ですか?」
10歳くらいの男の子が焚き火に当たるおじさんに尋ねます。
「樹齢かぁ…何年かねぇ。サヤちゃーん、このモミの木は樹齢何年やったか?」
鐘の近くで手持ち無沙汰にしていた中学生のお寺の娘さんと思しき子は適当にあしらいます。
「そがんと知るワケなかたい!」
「なんや、知らんのか。そうだなぁ…実はな、この木はそこにおるおばちゃんが産まれたときに植樹した(嘘)とさ。ってことは樹齢何年や?」
尋ねた少年に聞き返します。
(20年って言え、20年って言え・・・)
少年の兄は耳元で社会の生き抜き方を囁きます。
「20年くらい・・・?」
「そういうことたい」
戸惑いの入り混じる少年の声とおじさんの冗談に、地方に置き忘れてきたものがあるような気がしました。