日々の暮らしと時々の数学

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導関数が不連続なものとは?(その1)

直感的には正しそうな問題

◆問題1◆
Uを{\mathbb{R}}上の空でない開集合として、{a\in U}を任意にとる。
関数{f:U\longrightarrow \mathbb{R}}{x=a}の近傍で微分可能で、
導関数{x=a}の近傍で{x=a}を除き連続だと分かっている。
このとき、導関数{x=a}でも連続だろうか。

を考えよう。

実は、この答えはNoである。
{\displaystyle f(x)=x^2\sin{\frac{1}{x}+x}(x\neq 0),f(0)=0}
実数全体で微分可能であって、特に{f'(0)=1}であるが、そのまわりで
無限に振動していて{x=0}で連続ではない。
(この先の命題の証明のステップ2.がイメージできるように
xを足しているが、普通はxを省いたものが挙げられる)

グラフは青がこのグラフで、緑がx=0における接線である。
f:id:tekitou5353:20151208130803g:plain:h400
微分のグラフは
f:id:tekitou5353:20151208130821g:plain:h400
となっている。


原因は振動による不連続である。
では次はどうだろうか。

◆問題2◆
Uを{\mathbb{R}}上の空でない開集合として、{a\in U}を任意にとる。
関数{f:U\longrightarrow \mathbb{R}}{x=a}の近傍で微分可能である。
このとき、導関数x=aで左右からの極限はあるがそれらが一致しない場合や
正や負の無限に発散する場合はあるだろうか。




まず、前者が起こらないことが次からわかる。
解析学入門Ⅰ(杉浦)からの引用である。

◆命題◆
\mathbb{R}上の実数値関数f(x)は、区間\left[ a,b \right] 微分可能である。
このとき、f'(a)f'(b)の中間の任意の値mに対し、
あるc\in (a,b)が存在し、f'(c)=mとなる。

要は、微分係数は連続如何によらず中間値の定理が成立するということである。
証明のステップだけ書いておくと、

  1. f'(a) < m < f'(b)とし、f(x)-mxを新たにf(x)とおきなおすことでf'(a)< m=0< f'(b)の場合について考えればよくなる。
  2. \displaystyle f'(a)=\lim_{x\to a}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}であることに注意すれば、f(x)の連続性から(注:f'(x)ではない)、x=aの十分近傍では(単調性は言えないけれども)x< a\Rightarrow f(x)< f(a)およびその不等式を逆にしたものが成立する。これはf'(b)のまわりでも同様のことができる。
  3. これと最小値の原理からf(x)は区間(a,b)の内に最小をとるが、そこがf'(c)=0なるc\in (a,b)である。


また、このような用いなくても、もう少し直接的に得ることができる。
左右の極限が存在するので、平均値を使えば
\displaystyle \lim_{x\to a+0}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}=\lim_{x\to a+0}f'(c_x)=\lim_{x\to a+0}f'(x)となる。
逆の極限も同じなので、微分可能と言うことから\displaystyle \lim_{x\to a+0}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}=\lim_{x\to a-0}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}によって、
左右の極限は一致せざるを得ない。
(同時に、左右の極限が一致することが分かっていれば、
x=a微分可能と分かっていなくても、この極限から微分可能性が言える)

つまり、例えば先の例でも中間地の定理は確かに使えることが見てとれるから、上記の命題はこれ以上に、内容を含んでいるというわけである。


さらに後者も起こらない。
なぜならば、先と全く同様の議論ができる。
a=0として、\displaystyle \lim_{x\to +0}f'(x)=+\inftyだったとする。
\displaystyle \lim_{x\to +0}\frac{f(x)-f(0)}{x}=\lim_{x\to +0}f'(c_x)=+\infty
となり、微分係数が発散してしまう。


以上から、

◆結論◆
Uを{\mathbb{R}}上の空でない開集合として、{a\in U}を任意にとる。
関数{f:U\longrightarrow \mathbb{R}}{x=a}の近傍で微分可能である。
このとき、左右の極限がともに存在すればそれは一致して導関数は連続であり、
左右の極限のどちらか少なくとも一方は存在しない時は、収束しないものが振動する(発散はしない)。
そしていずれの場合でも中間値の定理は成立する。


次回は振動するときについて、さらに

◆問題◆
導関数\displaystyle \frac{\sin{\frac{1}{x}}}{x}のような感じで
有界な範囲に振動することはあるだろうか。

というのを考えてみよう。