導関数が不連続なものとは?(その1)
直感的には正しそうな問題
◆問題1◆
Uを上の空でない開集合として、を任意にとる。
関数がの近傍で微分可能で、
導関数がの近傍でを除き連続だと分かっている。
このとき、導関数はでも連続だろうか。
を考えよう。
実は、この答えはNoである。
例は
実数全体で微分可能であって、特にであるが、そのまわりで
無限に振動していてで連続ではない。
(この先の命題の証明のステップ2.がイメージできるように
xを足しているが、普通はxを省いたものが挙げられる)
グラフは青がこのグラフで、緑がx=0における接線である。
微分のグラフは
となっている。
原因は振動による不連続である。
では次はどうだろうか。
◆問題2◆
Uを上の空でない開集合として、を任意にとる。
関数がの近傍で微分可能である。
このとき、導関数はで左右からの極限はあるがそれらが一致しない場合や
正や負の無限に発散する場合はあるだろうか。
まず、前者が起こらないことが次からわかる。
解析学入門Ⅰ(杉浦)からの引用である。
◆命題◆
上の実数値関数は、区間で微分可能である。
このとき、との中間の任意の値に対し、
あるが存在し、となる。
要は、微分係数は連続如何によらず中間値の定理が成立するということである。
証明のステップだけ書いておくと、
- とし、を新たにとおきなおすことでの場合について考えればよくなる。
- であることに注意すれば、の連続性から(注:ではない)、の十分近傍では(単調性は言えないけれども)およびその不等式を逆にしたものが成立する。これはのまわりでも同様のことができる。
- これと最小値の原理からは区間の内に最小をとるが、そこがなるである。
また、このような用いなくても、もう少し直接的に得ることができる。
左右の極限が存在するので、平均値を使えば
となる。
逆の極限も同じなので、微分可能と言うことからによって、
左右の極限は一致せざるを得ない。
(同時に、左右の極限が一致することが分かっていれば、
で微分可能と分かっていなくても、この極限から微分可能性が言える)
つまり、例えば先の例でも中間地の定理は確かに使えることが見てとれるから、上記の命題はこれ以上に、内容を含んでいるというわけである。
さらに後者も起こらない。
なぜならば、先と全く同様の議論ができる。
として、だったとする。
となり、微分係数が発散してしまう。
以上から、
◆結論◆
Uを上の空でない開集合として、を任意にとる。
関数がの近傍で微分可能である。
このとき、左右の極限がともに存在すればそれは一致して導関数は連続であり、
左右の極限のどちらか少なくとも一方は存在しない時は、収束しないものが振動する(発散はしない)。
そしていずれの場合でも中間値の定理は成立する。
次回は振動するときについて、さらに
というのを考えてみよう。