導関数が不連続なものとは?(その2)
今回は前回に引き続き、導関数が不連続になってしまう
場合について考えよう。
前回は、導関数が不連続なら、それはその点の近傍の
左右のいずれかで振動しているしかない、ということが分かった。
また、その例としてという典型的なものを考えた。
さて、この例を振り返った時、
導関数が有界な範囲で振動しているが、
次の問題はどうだろうか。
◆問題◆
実数全体で定義された関数が以下のような条件を満たすものはあるか?
あるなら例を構成し、ないならないことを証明せよ:
答えはこの下。
答え:存在する。
追記
めちゃくちゃ簡単な例があります。
なんでの導関数が
有界になってしまったか、さえ考えれば終わりです。
そう、答えとしてがあります。
グラフは
であり、導関数のグラフは
である。
しかもこれは、原点を除き無限回微分可能となっている。
以下ではごちゃごちゃやっていますが、
簡単な事に気づかなかった様を生温かく見守ってください:
前回のという例が
なぜ導関数が振動しているにもかかわらず、で微分可能だったのか。
それは、という
形をしていることに由来している。
つまり、ローカルでは不穏な動きをする
有界な関数が大切なのである。
そして、そのローカルで不穏な動きについて、
接線の傾きは任意に大きく出来うることが考えられる。
だから、次のような構成をすればうまくいくことが分かる。
の近傍で病的な振る舞いをする有界な関数を用いて、
という形を
最終的に作る。
<Step1>
まず、次のような性質をもつ関数を作る。
例えばのときの場合はこのような調子である。
このようなキャップ状の関数を作り、これらの区間でを掛けて互い違いにしながら貼り合わせる。
これにより、区間について定めたが、区間では常に0、
区間ではによって接続する。
これらの張り合わせはどれも滑らかである。
こうやって定めた関数をとおく。
このグラフは次のようになる。
<Step2>
つぎに、どのにおいても微分係数を
変えないで有界性を保証するように調整する。
これにより、を作り出す。
すると、においてだが、
まず後ろの項はなので悪さをせず、
の十分近傍では無視できる。
そして手前の項は、となり、
有界でない振動を実現する。
このようにして完成した関数のグラフは以下のようになる。
緑のグラフはである。
なんかでなめらかにつながっていないように見えるが、
ちゃんと拡大すればなめらかに見える。
これに基づいて、それぞれのステップを実現する関数
(すでに上でイメージ図として例に挙げているもの)を
構成していこう。
まず、Step1のもの。
構成するにあたり、まず関数というのを見てみよう。
これが典型的なキャップ型の例だと思うが、左右対称なキャップなので、
端点で微係数の絶対値を違えることができない。
そこで、考えている区間で正となる関数を掛けてとしてみる。
すると、微係数以外の条件は満たされたままであり、微係数については
積の微分において、端点でgは消えることに注意すると
である。
したがって、と
なる正の値をとる関数を考えればよいので、一次関数で対応できる。
(別に一次関数でなくてもよい)
具体的に計算するならば、
である。
つぎに、Step2のもの。
実はこれ、という単純な方法によって、
となって、
各では0となっていたから、
自然数の逆数の点で微分係数を変えずに有界に変換できる。
(ちなみにもしStep1で作ったが有界になっていてくれたら
このような変換をかますことはないのだが、
各逆数の区間の中点を考えると有界にはならないことが分かる。
中点ではgからはnの-2乗のオーダーが、
Lからは3乗のオーダーが出てくるから。)
以上より
◆具体例◆
与えられた問に対する具体例として次が挙げられる:
で、ここで
である。(グラフは一番下の画像)