日々の暮らしと時々の数学

くだらないチラ裏スペース。時々数学のことを書く。

(1+1/x)^xの単調性について

(1+1/x)^xを微分を使わずに単調性を証明する。
目的は、
{\displaystyle
\lim_{x\to \infty}\left( 1+\frac{1}{x}\right) ^x
=\lim_{n\to \infty}\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^n
=e
}
を得ることである。
そのため指数対数微分を使いたくない。

この極限は、n=[x](ガウス記号)を用いれば一致が
示せるので、それでいいじゃないか、という話であるが、
(1+1/n)^nは有界単調列という論理を用いているから、
(1+1/x)^xに単調性を広げられないかと考えた。


(1+1/n)^nの単調性は二項展開を使っていた。
その証明は次を用いていた。

補題1◆
{n}自然数{ 0 < {i}\leq n}として
{\displaystyle
\frac{ {}_n{\rm C}_i}{n^i} < \frac{{}_{n+1}{\rm C}_{i}}{(n+1)^i} 
}
が成立する。

<証明>
{\displaystyle
\frac{{}_n{\rm C}_i}{n^i}
=\frac{n(n-1)\cdots (n-i+1)}{n^i}
=1\cdot\left( 1-\frac{1}{n}\right) \left( 1-\frac{2}{n}\right) \cdots\left( 1-\frac{i-1}{n}\right)
}
であって、
{\displaystyle\frac{{}_{n+1}{\rm C}_i}{(n+1)^i}
}はこれのnをn+1に変えたものである。
各j=1,2,...,i-1で{\displaystyle 1-\frac{j}{n}<1-\frac{j}{n+1}}なので、
補題が得られる。
<証明終了>

自然数の場合の単調性を
ちょっといじれば有理数の単調性が言えた。

補題2◆
関数{\displaystyle f(x)=(1+\frac{1}{x})^x}{\mathbb{Q}_{>0}}上で単調増加。

<証明>
分母を通分できることを考えれば、
{{n}<{m},p}自然数として、
{\displaystyle
\left( 1+\frac{p}{n}\right) ^{\frac{n}{p}} < \left( 1+\frac{p}{m}\right) ^{\frac{m}{p}}
}を示せばよいが、
p乗して
{\displaystyle
\left( 1+\frac{p}{n}\right) ^{n} < \left( 1+\frac{p}{m}\right) ^{m}
}で十分である。
このとき、
{\displaystyle
\left( 1+\frac{p}{m}\right) ^{m}
=\sum_{i=0}^{m}\frac{{}_m{\rm C}_i}{m^i}p^i
>\sum_{i=0}^{n}\frac{{}_m{\rm C}_i}{m^i}p^i
>\sum_{i=0}^{n}\frac{{}_n{\rm C}_i}{n^i}p^i
=\left( 1+\frac{p}{n}\right) ^{n}
}
により補題は示された。
<証明終了>

補題3◆
{\mathbb{R}}上の連続関数{f(x)}{\mathbb{Q}}上で狭義単調増加なら
{\mathbb{R}}上でも狭義単調増加。

これは稠密性から明らか。

◆命題◆
関数{\displaystyle f(x)=(1+\frac{1}{x})^x}{\mathbb{R}_{>0}}上で単調増加。

<証明>
連続関数の合成関数は連続を認めると
関数f(x)は連続だから、あとは補題2と補題3から
従う。
<証明終了>