ln(2)を手計算で近似しよう(その1)
今回は常用対数ではなく自然対数を手計算で近似してみよう。
次の2種類の近似をする。
計算しやすい評価として
◆評価1◆
を得る。また後々計算できる範囲で項を増やして調節していく。
下4桁のレベル(以下切り捨て)で計算したとすると、前者は
であり、後者は
が得られることになる。
(この評価は前回の記事に用いている。)
より正確な値は次回に回す。
さらに近似の項を増やすと
◆評価2◆
- で誤差は未満
- で誤差未満
となるが、手計算のレベルで分母が大きい項を精度よく評価するのは
次回として、ぱっと見て分かる程度の補正にすると、
◆評価3◆
となる。これは難しく考えることなく得ることができる。
このとき、評価1と評価3について、下4桁で計算した場合から、
下6桁で計算した場合まで、どれほどの精度で見積もれるかを表にした。
これを見ると、を確定させるには下5桁、
を確定させるには下6桁で計算しておく必要があると分かる。
まず、自然数の自然対数を求めるにあたり、有効な級数を出しておこう。
用いるのは、
◆命題◆
任意の自然数m,nに対し、
が成立し、その誤差は未満である。
である。
であるとき、
という式が成り立つ。
これは、等比級数の和の公式
の項別積分を用いているのだった。
したがって、この等比級数の和を途中で打ち切って積分をする、
あるいはテイラーの定理の積分型の剰余項を利用して
誤差項を評価する。
なので,これを0からxまで積分することで、
とできる。
ここからはに限って話をする。
このとき、任意のにおいて
が成立するので、
が得られる。
同様に、において
を0からxまで積分して、
なので、
したがって、この2つの評価を足すことで、
が得られる。
ここで、自然数mについて、を代入することで、
となり、確かに命題の内容が得られた。
さて、これを直接的に用いてそれぞれの評価の1番を得て行こう。
まず、m=1,n=3としたものが、評価1-1、
である。
さらに項を増やしてm=1,n=4としたものが、評価2-1、
であって、誤差は未満となっている。
ここで、手荒いやり方をするが、この評価2-1を計算しやすいように
評価3-1に調節する。
まず、下からの評価については、
とすることで得ている。
次に、上からの評価については、まず、誤差が
である。
第4項を計算しやすいように
で評価すると、これは大体くらい値を大きくしているので、
明らかにを越える。
だから、
と出来るのである。
これらの評価を見ると、4次の項まで展開している。
その必要に迫られているのは、mが小さいためである。
mが大きければ誤差項を見るとべきが2つずつ増えるので、
誤差がすぐ小さくなってくれる。
そこで、mを大きくする方法を考えてみよう。
今回、log2が計算できたのは、m=1とした時にlog1=0となってくれるからであった。
つまり、mを2以上にすると、log2を作れたとしても、他の素因数が出てくる。
この事情を考慮する。
log(m)は、mに現われる素因数のlogの整数係数の線型和になる。
したがって、m+1とmに現われてよい素因数を固定し、
その素因数の数だけmを用意すれば、逆行列を計算することで、
命題の級数の線型和を作ることができる。
(ここら辺は具体的な操作を見た方が早い)
例えば、2と3という素因数が出てくることのみ認めると、
mとしてm=2,8がとれる。これからとし、
またとすると、u,vからa,bを求めるには
の逆行列を計算すればよい。
このような考えの下、
2,3,5という3つの素因数が出てくることを認めることにする。
すると、(もっと小さく選べるが、大きく選んだほうが有利なので)
m=15,24,80が選べて、としておくと、
であるが、
奇跡的に
と有理整数環の中で話が収まってくれるので、計算量が少なくて済む。
(そうでない場合は、逆行列の成分の大きさに対し、
それを分数で表示したときの桁が大きくなってしまい、計算量が嵩んでしまう。)
よってこれを採用して考えてみよう。
逆行列を計算する(やや負担が大きい)と、
が求まる。
したがって、
である。
これを用いて、m=15,24,80の場合の命題をn=1で打ち切ると、評価1-2の下からの
を得ることができる。
この時の誤差は3種類出てくるが、面倒なので、
最も大きいpの誤差でq,rの誤差も押えておくと、
と見積もれる。
精度を上げよう。
pの影響がm的にも線型和の係数的にも最も大きいので、
pだけn=2まで項をとると、
を得ることができる。
今度は、qの誤差が一番大きくなったので、これに揃えて誤差評価をしてみよう。
p,q,rから出てくる誤差はそれぞれである。
このとき、はともに
明らかにの2倍よりも大きい。
だから、誤差の和はで
評価できる。
これが評価2-2の誤差である。
最後にこれを計算しやすく調整して評価3-2になおそう。
まず、なので、を使えば
下からの評価は簡単に得ることができる。
(log[10]2では散々32^2=1024≒1000を使った。
31の平方は1000を越えないぎりぎりであると知っておくべきである。)
次に、まず誤差項について、であり、
(49を減らして48を増やすと左辺が右辺になるから。
和が一定の下では平均に近いほど積は大きい。)
同様の原理でなので、
が従う。
さらに、を上から簡単に評価すると、
だから、
よって、誤差を合わせて
が得られた。
今回の記事は主に解析概論を中心に参照した。
見返してみて、は偶然にもp,q,rの”七五三”だなあと感じた。
3辺の長さが7,5,3の三角形は内角に120度が出てくるからなんともいい組み合わせだ。