日々の暮らしと時々の数学

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log[10]2<28/93は手計算できる

やっぱりやふーぶろぐからチラシの裏スペースを移動。
アイキャッチ画像の調節に手間取って何回も同じ記事投稿している。
どこかで何回も表示されていたら嫌だなぁ。


{\displaystyle \log_{10}2<\frac{28}{93}}が成立することを手計算で示そう。

ここでは

◆自作問題◆

  1. {1.024^{10} < 1.28}
  2. {\displaystyle\log_{10}2<\frac{28}{93} }

を証明せよ。

を考えてみる。

{0.3<\log_{10}2}{2^{10}=1024\approx 10^3}ということ
から得られるのはよく知られている。

このとき、1.024を眺めていると、
{\displaystyle 1.024^{10}\approx 1+0.24\approx 1.28=\frac{2^7}{10^2}}
ということに気がついた。
これがこの問題の発端である。


1.が得られれば、2.は容易。
なぜならば、
2^100=(2^10)^10
=(10^3*1.024)^10
=10^30*(1.024)^10<10^30*(2^7 / 10^2)
より、2^93<10^28が得られるから、あとはlog[10]をとればよい。

だから、この問題は1.を得ることが肝要。
手計算をする前に、先に(1.024)^10の値を書いておくと
1.2676506...なので、あまり雑には評価できない。


<1.高校流の証明>
{\displaystyle 1.024^{10}=\left\{ 1+\frac{0.24}{10}\right\} ^{10}
=\sum_{k=0}^{10}{}_{10}{\rm C}_{k}\left( \frac{0.24}{10}\right) ^k}
で、

k≧1において
{\displaystyle 
{}_{10}{\rm C}_k=\frac{10\cdot 9\cdot ...\cdot (10-k+1)}{k!}
<\frac{10^k}{k!} 
}
で評価することで、

{\displaystyle 
1.024^{10}<\sum_{k=0}^{10}\frac{0.24^k}{k!}
}
{\displaystyle 
<1+0.24+\frac{0.24^2}{2}+\frac{0.24^3}{3!}(1+0.24+0.24^2+0.24^3+\cdots )
}
であって、{\displaystyle \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{1-0.24}<1}だから
{\displaystyle 
1.024^{10}<1+0.24+\frac{0.24^2}{2}+\frac{0.24^3}{3} 
}
と評価出来る。

いま、0.24が1/4に近いことに注意して見ると、
{\displaystyle 
\frac{0.24^2}{2} < 0.24\cdot \frac{1}{4\cdot 2}=0.03
}
{\displaystyle 
\frac{0.24^3}{3}<0.24\cdot \frac{1}{4^2\cdot 3}=0.005
}
だから、

{\displaystyle 
1.024^{10}<1+0.24+0.03+0.0075=1.275<1.28
}
を得ることができた。
<証明終了>


今の話をみると、0.24≒1/4を多用しているので、
1.024≒41/40でいけるんじゃないかと思ったが、
(41/40)^10=1.28008...
となり、10乗の下では大きくし過ぎているのでだめだった。

上を修正したので削除したが、4次の評価としては
(0.24)^4<0.24*(1/4)^3=0.015/4<0.016/4=0.004
が使える。


さて、
28/93=0.301075...
log[10]2=0.3010299...
をみると、|log[10]2-28/93|<1/22088
というかなりいい有理数による近似だと分かった。

ぱっと見第2種の最良近似になっていそうなので、
連分数展開をさせてみると、
log[10]2=[0;3,3,9,2,2,...]
となり、
{\displaystyle
\frac{1}{3+\frac{1}{3+\frac{1}{9}}}=\frac{28}{93}
}
なので、確かにそうなっていた。
これを手計算で得たことになる。
(連分数については
cf. http://www.ma.noda.tus.ac.jp/u/ha/SS2006/Data/Hokoku/hashimot.pdf

など)


ここまで書いた途中で
{\displaystyle
1.024^{10}<\sum_{k=0}^{10}\frac{0.24^k}{k!}
}
がなんだかe^0.24っぽいなと気付いた。
よく考えると、

{\displaystyle
1.024^{10}=\left\{ (1+0.024)^{\frac{1}{0.024}}\right\} ^{0.24}
}で、(1+1/x)^xは単調増加だから、

{\displaystyle
1.024^{10} < e^{0.24} = \sum_{k=0}^{\infty}\frac{0.24^k}{k!}
}
が簡単にわかる。

上と同様に
{\displaystyle
\sum_{k=0}^{\infty}\frac{0.24^k}{k!}
<1+0.24+\frac{0.24^2}{2}+\frac{0.24^3}{3!}(1+0.24+0.24^2+0.24^3+\cdots )
}
が通用するので、これからでも同じ結果が得られる。


{\displaystyle
\frac{1}{2}\cdot (1+0.24+0.24^2+\cdots )<1
}と切っているパートについては、
次のようにテイラーの定理からいい感じに得ることもできた。

補題
0<μ<1,n≧2であるとき、
{\displaystyle
\sum_{k=0}^{n}\frac{{\mu}^k}{k!} \ <\  e^{\mu}\ <\ \sum_{k=0}^{n-1}\frac{{\mu}^k}{k!} +\frac{(1+\mu ){\mu}^n}{n!} }
が成立する。

<証明>

左側はμ>0で通用する評価。テーラー展開でよい。
右側は、
テーラーの定理を用いて、
あるξ∈(0,μ)があって、
{\displaystyle
e^{\mu}=\sum_{k=0}^{n}\frac{{\mu}^k}{k!} +\frac{e^{\xi}{\mu}^{n+1}}{(n+1)!} 
}
だが、これを{ {e}^{\xi}<{e}<3\leq n+1 }で評価しているだけである。
<証明終了>

このとき、右端と左端の差を考えることで、
これらの評価は誤差がμ^(n+1)/n!未満だということも
分かる。

いま、
μ=0.24として、
これまでの方法では
{\displaystyle
e^{\mu}<1+\mu +\frac{{\mu}^2}{2}+\frac{{\mu}^3}{6}(1+\mu +{\mu}^2+\cdots )
}
を評価していたが、

この補題では、
{\displaystyle
e^{\mu}<1+\mu +\frac{{\mu}^2}{2}+\frac{{\mu}^3}{6}(1+\mu )
}
と、1+μで切っていいと言っているのである。
そして、最後の1+μを1+μ<2で評価すれば、

{\displaystyle 
1.024^{10}<{e}^{0.24}<1+0.24+\frac{0.24^2}{2}+\frac{0.24^3}{3} 
}
という同様の評価が得られる。


上の誤差に関する記述を見ると、
n=2として切れば、e^μと1+μ+μ^2/2+μ^3/2の
誤差はμ^3/6<0.0025未満で、
実はe^μ=1.271249...だからこれで事足りる。

実際、
e^μ<1+μ+μ^2/2+μ^3/2<1+0.24+0.03+0.075=1.2775
で1.28までに間に合わせることができる。
(注:1.2775>e^μ+0.0025となっているのは
ところどころ0.24<1/4で評価しているため)